第七話・堕天
−月華の剣士インターネットノベル−

1999/09/02 - 1999/09/20
http://www.bluemoon4u.com/novels/mirror7_5.html

「ほう……外見も、人格さえも変わるとは、随分と凝った演出だな」

顎に手を当て感心の声を漏らす嘉神に、彼は肩を竦めてみせた。

「そりゃ、どーも。けど、何であんた『俺』の存在を知っていたんだ?」

いたって平然と炎の中から歩み出ながら、彼は──『楓』はぶっきらぼうに聞き返す。

「別に、私は貴様の──別の人格の存在を知っていた訳ではない。私が知っていたのは……貴様のその『力』の存在だ」

「──何の事だ?」

しれっととぼける『楓』に、嘉神はややくぐもった笑い声を上げた。

「くく……とぼけなくても良い。貴様が、私の炎を受ける寸前──その『力』で炎の軌道を逸らして、直撃を避けたのは分かっているつもりだよ」

「そーかい。こういう『力』の使い方は苦手だから正直、上手くいくとは思わなかったけどな。んじゃ、聞き方を変えるか。何で、俺のこの『力』を事を知っていたんだ?」

嘉神の言葉にあっさり折れると、『楓』は右手の刀を一振りした。刹那、青白い稲妻が帯電するようにその刀身を這う。

その様子を見ても、嘉神はさして驚かなかった。むしろ、ある事を確信したらしい。

「簡単な事だ。私と貴様は──似たような存在なのだからな」

「……何だって?」

それを聞き、『楓』も訝るように眉を潜める。嘉神の言っている事は、なんとなくは分かった。だが、それは……

「言い方が悪かったか? ならば単刀直入に言ってやろう」

目付きを険しくさせる『楓』を、揶揄するかの如き口調で嘉神は続ける。

「私がそうであるように、貴様も──『四神』の一人なのだよ」

言い放つ嘉神の言葉に賛同するかのように、蒼い雷が窓の外で一際大きく轟いた──

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